続・普代に生えているトゲやツルの植物

 「ハリギリ(センノキ)」かと思ったら、「ハリエンジュ」だった件

また、トゲの話で恐縮です。興味のある方がいらっしゃれば、お付き合いください。前回、ご紹介した記事の中で誤りがありました。畑の脇に「ハリギリ(センノキ)」が生えていると書きましたが、別の木でした。大変申し訳ございません。

▽畑の脇に生えている木

▽花

イヌダラのような新芽は出ないし、花が咲いたら、普代村の木「エンジュ」にそっくり。遠目に見れば、白いフジにも似ている。葉は、小さく丸い豆科の植物のような形…

あれれ?と思って調べてみたら「ハリギリ(センノキ)」ではなく、「ハリエンジュ」でした。ハリギリは肥沃度の指標になりますが、周辺の土が肥えていたのは、豆科の植物ならではの根粒菌(※)の影響だったようです。

(※)根粒菌とはバクテリアの一種で、豆科の植物の根に寄生する菌のこと。この根粒菌があれば、葉茎の成長に必要な窒素(肥料)を作り出すことができます。マメ科のクローバーやレンゲが緑肥になる理由の一つが、この根粒菌です。

同じエンジュと名が付いても、ハリエンジュは“要注意外来生物”

▽「エンジュ」は村の木に指定されています。
普代村の木【エンジュ】

村内の山林に分布し、国道45号沿いにも植樹されています。高さは20メートルにも達する落葉高木で、昭和49年の全国植樹祭には、村からの献上木になりました。緑と安らぎをつくり、高くそびえようとする姿は、私たちの勤勉性にも似ています。

「ハリエンジュ」は要注意外来生物
侵略的外来種ワースト100に入っている「ハリエンジュ」は、旺盛な繁殖力を持ちます。

・根と種で増える
・切り株からも発芽する
・大量に花が咲く
・種子は地中で休眠できる
・根粒菌の窒素固定により痩せた土でも育つ
・アレロパシーで他の植物を抑制する

⇒原産は北米で、導入当初は山腹緑化や海岸林、街路樹として利用されました。大雨で種子が運ばれるなどして分布が拡大して在来植生を駆逐する恐れがあるとされています。

エンジュに似た、トゲトゲした植物が近所に生えている皆さん。
それは、注意が必要な外来種かもしれませんよ。

エンジュとハリエンジュ、フジどう違う?

▽エンジュ(マメ科エンジュ属)
開花時期7~8月、葉の先端がとがっている。トゲはない。

▽ハリエンジュ
開花時期5~6月、葉は全体的に丸い。幹や枝にトゲがある。
※トゲの無い、トゲナシハリエンジュというのもあるそうです。
 ネーミングがトゲナシトゲアリトゲハムシみたいですね。

▽フジ
開花時期4月~5月、葉の先端がとがっている。全体的にツル状。

エンジュとハリエンジュ、フジ。一見するとよく似ています。全部、マメ科の植物です。目印となるであろうトゲも、葉が茂ると見えづらかったり、古木になると、無くなってしまいます。開花時期がエンジュより早いと思ったら、よく観察してみてください。


“マメ”はシカの大好物
冬、畑の脇に生えているハリエンジュはシカに樹皮を食べられていました。マメ科ということで、大豆と似たような味?ニオイ?成分?があるのでしょうか。
調べてみたら、「ハリエンジュ」の樹皮には有毒タンパクが含まれているのだそうです。馬が食べて中毒を起こしたという事例があるそうですが、原産地(北米)では、シカ類が枝葉をエサにしているという文献もあります。(人間にも毒性があります。)




ハリエンジュのミツはハチの好物
ハリエンジュは、もともと「アカシア」という名前で輸入されていましたが、後に輸入された本来のアカシアと区別するため、現在は「ニセアカシア」と呼ばれています。そのため、アカシアハチミツとして販売されているのは、ハリエンジュを蜜源としているものが多いそうです。


ということは、村の木・エンジュも蜜源になりえるのでしょうか。
村の地域おこし協力隊で養蜂をされている方がいるので、村の特産品にエンジュのハチミツが追加される日がくるかもしれませんね。


■マリーゴールドかと思ったら、カナムグラだった件
5月ごろ、畑のマリーゴールドを植えていた周辺に、いくつも芽が出ていたので、喜んで並べて植えたら、悪名高い雑草のカナムグラでした。
カナムグラは茎や葉にトゲがある植物です。その強靭なツルは、鉄に例えられるほど。畑の土が痩せていたことで、繁殖せずに済みました。良いのか、悪いのか…
マリーゴールドとカナムグラの芽、共通点は赤い茎と、長い双葉、ギザギザの葉ですカナムグラは、葉の表面がガサガサした手触り。新芽を見つけたら、花が咲く前に抜いておくと繁殖を防げます。細かいトゲが密集するツルは、刈払い機に絡みついて度々作業が中断され厄介です。

村内には、カナムグラの仲間のホップも
天ぷらで食べることもあるそうです。


■ビンボウカズラとの戦い

さきほどのカナムグラと似たような場所に生えているのが、ビンボウカズラです。同じツル性ですが、こちらはブドウ科。花の蜜が多いのでスズメバチを呼びます。



ビンボウカズラという呼び名
「貧しくて庭の手入れをする暇のない人の家に生えるから」とか、「生える庭の家は貧しく見えるから」とか、「家に生えていると、畑や山の植物が枯れて貧乏になる」などと言われています。なんてこった…

ビンボウカズラの標準和名は「ヤブガラシ」ですが、こちらもなかなかの名前ですね。

芽は、赤っぽい色をしているので生えていればすぐに分かります。引き抜くと、ゴボウのような根がずるりと出てきます。ちぎると増殖してしまうので、根こそぎ抜くのがポイント。この根が残っている限り、次から次へと生えてきます。根を抜けないときは、地上部を刈って、根に栄養を与えないようにします。


ビンボウカズラの根はイノシシが好むとも言われるので少しずつ減らしていきたいです。

■梅雨時期に白くなる葉は、ネコの好物だった
毎年、梅雨時期だけ葉の色が白くなるツル植物があって、いつも不思議に思っていました。調べてみたら、マタタビの葉だそうで、普代では村のいたるところに生えています。葉が白くなるのは、虫に花が咲いたことをアピールするため。白く見えるのは色素ではなく、空気の層ができて光が乱反射しているからです。花が終わると元に戻ります。


マタタビは、キウイフルーツに似た果物・サルナシの仲間。地域の方から、キウイに似たサルナシでもない果物をいただいたことがあります。シナサルナシ?野生化したキウイでしょうか?

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我、敗れて山河あり
調べてみると、身近な植物がどのように増えていったのか分かりました。トゲもツルも太陽の光を浴びる植物の戦略。繁殖力が旺盛な植物は扱いに注意したいです。

また、植物には暮らしに役立てられる点があれば、気を付けなければいけない点もあるため、時間をかけてよく観察したいと感じました。

雨が降り、気温が上がるとグングン伸びる草木。土の中に、たくさんの種子が待機しているんですね。自然の力に圧倒されます。緑に飲み込まれてしまうような感覚です。草取りをしていると映画「もののけ姫」のラストが脳内再生されて、くじけそうになります。そこらをウロウロしているカモシカは、デイダラボッチだったのかもしれません。庭があっという間に草ぼうぼうになってしまうのですから。


でも、負けてはいられません。見て見ぬフリをするほど困るのは自分です。

涼しい曇りの日には、粛々と草と戦います。

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